天使のあなたへ

アメリカで大学生をしていた時、911の同時多発テロが起きました。

私は西海岸の街にいて、テロが起こったのは東海岸なので、実質何も被害にはあっていないのですが、学校に行くと教室には巨大テレビが持ち込まれていて、授業どころではなく、みんなテレビにくぎ付けでした。

当時、私の周りには、中東系の知り合いが多く、本人には何も関係が無いのに、同じ中東系ということでアメリカにいられなくなった人や、アメリカにいてもいつ自分の身が危険にさらされるかわからない恐怖におびえるようになった人がいました。

ビザの発行などもその後一気に厳しくなり、アメリカ全土で大パニックの日々が続いていました。

突然冒頭から、暗い話でびっくりさせてしまっていたら、ごめんなさいね。

今日、3月11日は、東日本大震災が起こった日なんですよね。

あの震災で亡くなられた人のご冥福をお祈りいたします。

もうあれから14年。月日が経つのは早いものですね。

昔、まだアメリカにいた頃、ある日本人の人が、自分の誕生日は9月11日だから、毎回誕生日になるとあのテロを思い出す、と言っていました。

最近、ある女の子が、こんなことを言っていたのです。

「私の誕生日は3月11日で、ちょうど震災の1年後に産まれた。だから人に誕生日の話をすると、いつも、あの震災と同じ日ね、って言われる。」

そういう彼女は、今にも泣き出しそうな、とても暗い気持ちの重い表情で、この言葉を私に伝えてくれたんです。

全然、カウンセリングとは無関係の子。でも、この子はこの子なりに、実際に経験したことのない震災の悲痛さを、別の形で経験しているんだな、と感じました。

私は彼女に、こんなことを伝えました。

「あなたが、震災に合った人たち、そこで亡くなってしまった人たちのことを想って悲しんでいるのは、それはあなたの優しさよね。そんな優しい心を持っているのは、とっても素敵なことだって思う。あなたがとっても優しい子だから、同じように悲しむ気持ちに寄り添えるのね。

でもね、あなたは自分のお誕生日を悲しむ必要は無いのよ。

だって、確かに、震災は酷かったし、亡くなってしまった人もいて、きっとその人たちは亡くなりたくて亡くなったわけではないのだろうけれど、そこで生き残った人もたくさんいるでしょ。

きっとその人たちも、同じように、自分だけ生き残ってしまって、って悲しんでいるのかもしれないよね。

それって、とっても悲しく苦しいことよね。あなたはその苦しみが、よくわかる子だから、悲しい気分になってしまうのよね。

ねぇ。あなたが生れてきた時、お父さんもお母さんも、とっても喜んでたよね？おじいちゃんやおばあちゃんも、とっても喜んだよね？

どうしてだかわかる？

それは、あなたが産まれてきてくれたから。あなたが無事に産まれてきてくれたからよ。

あなたが産まれてきたことで、あなたが存在していることで、あなたは大切な人を幸せにしているの。

あなたは、生きることの素晴らしさを知っていて、生きていることの喜びをわかっていて、ちゃんとそれを人に伝えることができる人なの。

だからきっと、この3月11日という、大変な出来事のあった日に産まれてきたのね。

たくさんの人に、あなたが笑顔でいることによって、生きるってステキよね、ってことを伝えられる力を持っているのね。」

そんなことを伝えたら、彼女の顔はパーッと明るく輝きました。

まだ13歳の子でも、こんなに心を痛めて、自分の存在を何かマイナスなものと感じる繊細さを持っています。

きっと、多くの人が、この日だけじゃなく、何か不本意な出来事で、全く本人に罪はなくても、自分が悪いって、罪悪感を背負っているのかもしれません。

それは優しさの証かもしれませんが、その人の優しさは、決して自分を責める道具ではなく、そんな形で使う必要は無いんです。

少しでも多くの人が、必要のない罪悪感を手放して、心の底から輝く笑顔を取り戻して、望む幸せを存分に感じられることを心から願っています。

今日はあなたのお誕生日ではないかもしれませんが、

この世界に産まれてきてくれて、ありがとう。