「受取る」って何だろう？

心の世界を勉強していると、「与える」とか「受取る」とか、そんなことよく耳にしたりします。カウンセリングでも、もしかすると使っている言葉かもしれません。

わかるようで、わからない…
何を与えるの？何を受取るの？

というように、非常に抽象的な言葉のようにも思います。

「与えて抜ける」なんて言葉も、実は先日、心の勉強を一緒にしていた友人と話していて久しぶりに聞いたのですが、そういえば昔よく言われていたなぁ～、なんて懐かしく感じました。

母校、神戸メンタルサービスの講師陣はよく使う言葉なのではないでしょうか。

私も、神戸メンタルサービスの講座で、講師を務めさせていただくことがありまして、以前、「与えることと受取ること」についての恋愛心理学講座をさせていただきました。

与えることと受取ることって、同時に発生している、と言います。

たとえば、AさんがBさんにプレゼントをあげたとします。
Aさんはプレゼントを差し出します。
Bさんはそれを受取ります。物理的には、手を伸ばして、Bさんの手の中にそのプレゼントが収まりますね。
ここでやっと、AさんはBさんにプレゼントを「与えた」ことになるんですよね。Bさんが手を伸ばして受取らなければ、Aさんはいつまで経っても与えることができない状態なんですよ。
Bさんも、手を伸ばしてそのプレゼントを掴み受取る意思が無ければ、Bさんが受取るって不可能なんですよね。

これが心のことになるとどうなるか。

AさんがBさんを愛する。（愛する、という表現がイメージしにくい場合は、優しくする、とイメージしてみてください。）
AさんがBさんに純粋な気持ちで愛したいと思い愛している時は与えている状態。
BさんもAさんの愛が嬉しくて愛されている、と感じていれば、受取れている状態です。

この時、Aさんは愛している、与えている側。愛すること、与えることに喜びを感じている状態なのです。そこでBさんが喜んでくれるとなお嬉しいですよね。Bさんが喜んでくれる、という嬉しさもAさんは受取れますし、すでに愛すること、与えることがAさんのしたいことなので、それができたことに喜びという、あたたかい気分を受取ることができているのです。

Bさんは、愛される、受取る側。愛してくれる人の存在が自分にはいる、と感じることができて、もちろん嬉しいですよね。Aさんの愛を嬉しさとして受取っているのです。BさんがAさんの愛を嬉しさとして受取った時、BさんはAさんに喜びを与えることができているのです。

同時に、Bさんは、自分は愛される存在だ、と自分の存在意義も受取っているんです。それはきっと、Aさんからの愛だけではなく、今まで自分には愛してくれる人がいた、ということを受取ってきたからこそ、自分は愛される存在だ、と感じられる、自分の存在意義を受取れるのです。これができると、Aさんに「愛させてあげる」ということを与えることができます。言い換えると、愛しやすい態度として振る舞うことができる、ということ。

よく愛されやすい態度、愛しにくい態度、として、野良猫のたとえ話が使われたりしますね。
にゃ～、って可愛くすり寄ってくるネコにはエサをあげたくなったりヨシヨシと触りたくなったり、可愛がりたいって気持ちになったりします。
反対に、ガオーって警戒しているネコ、爪を立ててくるネコには近寄りたくもない、という気持ちになったりします。

恋愛関係、親子関係、友人関係、どの人間関係においても
自分が先に与える側になると、その関係は上手く回りやすくなります。
人は愛したい生き物だ、と言いますが、同時に、愛されたい、という想いも持ちます。当然ですよね。

しかしこの、愛されたい、という想いが強すぎると、残念ながらこの想いが障害になり、愛されにくくなってしまう、ということが起こったりするのです。

愛されたい、と強く思っている時、その想いの奥の方には、十分愛されていない、愛が足りない、という飢餓状態の心があるのです。

お腹が空いている時って、お腹ペコペコだから早く何か食べさせて！という気持ちになりますよね。でも、好き嫌いが激しいと、お腹が空いているけれど、これは食べたくない、あれじゃなきゃイヤだ！という、好きなものじゃなきゃ食べられない！食べたくない！と選り好みしたりします。

実は愛も同じように、愛されたい、十分愛されていない、愛が足りない、という飢餓状態の心の時って、周りにあった愛に気づいていなかったり、これは欲しい愛の形じゃない！と受取り拒否をしていたりするんです。

私自身が散々それをしてきましたから、受取り拒否したい気持ちはとてもよくわかります。こんなの受取れるか！って思う気持ちも、痛いほどよくわかります。私もだいぶ長い期間やっていました。だから、受取り拒否することが悪いとは思わないけれど、これを続けていた私は、心が辛くて苦しかったです。

愛されたいのに、自分の望む形の愛じゃなければ愛されていると思えない。そうなると、自分から人を愛する時も、どうして私が愛さなきゃいけないの？と思ってしまったりするものです。

もしくは、自分の望む形の愛をもらえるなら愛してあげてもいいですよ、という交換条件になってしまったりするんですね。

しかし残念ながら、交換条件になると、与えてもそこに喜びは無い、むしろ我慢して仕方ないからあげます、という犠牲心。この犠牲心の下に隠れている想いがもっと実は自分を苦しめるもので、「こんなものをあげてしまってごめんなさい」と自分を責める巨大な想いが潜んでいるんです。

そして交換条件として望む形の愛をもらえたとしても、それはもらって当たり前、やっとくれた、という、喜びというよりは、無いよりはあった方が良いけど、あるのが当然の空気のような無味無臭、って感じになってしまうんですね。有難みなんて全然感じません。

こんなネガティブスパイラルが続けば、そりゃ、愛も飢餓状態に陥りますね。

しかし、想い出してほしいのです。
今、私のこのブログに出逢ってくださったあなたは、これを読む日本語読解力がありますよね。それって、日本語を勉強した過去があるということですよね。日本国内で生まれ育っていれば、そんなに必死になって日本語の勉強をしたわけではないかもしれません。しかし、当然のように小学校に行き、読み書きを習い、使いこなせるまでになっている。

それって、誰かが教えてくれて、誰かがサポートしてくれて、誰かが愛してくれた結果、なのではないでしょうか？

屁理屈のように聞こえるのかもしれませんが、そんな小さなどこにでもありそうな愛を自分で見つけた時、愛のネガティブスパイラルって、変わるんです。

あの時、あの瞬間、愛されていた。

それをまず１つ、見つけて、受取ってみてください。

過去をたどると、必ずあるはずです。
あなたになら、必ず見つけられます。