愛が受け取れないのは、あなたが怒りを握りしめているから

カウンセリングで、こんなふうに言われることがあります。

「お母さんの愛を、受け取ってみましょうか」
「昔の彼が向けてくれたものを、もう一度、受け取ってみませんか」

やってみようとするんです。
目を閉じて、あの人の顔を思い浮かべて。

でも、なぜか入ってこない。
胸のあたりで、すっとはじかれる感じがする。

「受け取ってみて」と言われても入ってこないとき、その奥では、あなたの中でまだ生きている気持ちが働いています。それはむしろ、あなたが大事なものを、ちゃんと守ろうとしている証なんです。

今日は、その「受け取れなさ」の正体と、それでも愛を受け取れるようになる、遠回りだけど確かな一歩について、書いていきます。

※このストーリーは、ご相談者さまからの許可をいただいたうえで、プライバシーに配慮してアレンジを加え、掲載しています。

今日もお越しくださりありがとうございます。
カウンセリングサービス・心理カウンセラーの青山リナです。

もうこれ以上ワタシ(自分)の幸せを先延ばしにしない!
ワタシを幸せにする心理学

今日も必要な方に届きますように。

目次

「受け取れない」んじゃなくて、「受け取りたくない」

以前、Mさん(37歳)という方が、こんな話をしてくれました。

お母さんとの関係が、ずっとしんどかった。
認めてもらえた記憶がない。
何をしても「もっとちゃんとしなさい」で、褒められた覚えがほとんどない。

そんなお母さんが、最近になって少し優しくなった。

まわりからは「お母さんも歳をとって丸くなったんだね、よかったね」と言われる。
でもMさんは、どうしても素直に受け取れないんです。

「今さら優しくされても、って思っちゃうんです。あんなに傷ついてきたのに、それを全部なかったことにして、いい親子のふりなんてできない」

つらいのは、まわりが「よかったね」と言ってくれるほど、自分だけが取り残されていく感じがすること。素直に喜べない自分が、心の狭い人間みたいに思えてくる。そんな自分を、また責めてしまう。

「本当は、私だってうれしいと思いたいんです。でも、思えない。そういう自分が、いちばんイヤで」

Mさんは、そう言って少しうつむきました。

これ、Mさんが冷たいわけじゃないんですよね。

私は、この「受け取れなさ」を、少しだけ言い換えてみたくなりました。Mさんは、受け取れないんじゃない。受け取りたくないんです。

だって、お母さんの優しさを今ここで受け取ってしまったら、それはどこかで「お母さんは、そんなに悪い人じゃなかった」という話になってしまう。あんなにつらかったことが、「まあ、いい親だったよね」でまとめられてしまう気がする。

それだけは、絶対にいや。

だから受け取らない。もらってなんかやるもんか、って、心のどこかが決めているんです。

そしてこれは、Mさんに限った話ではありません。元夫の優しさ、別れた彼がくれたもの。どんなに「受け取ってみて」と言われても入ってこないとき、その奥には、たいてい同じものがあります。

受け取ることが、「許すこと」になってしまう気がする

なぜ、受け取りたくないのか。

それは、受け取ることが、そのまま「相手を許すこと」になってしまう気がするからなんです。

まだ許していないのに、愛だけ受け取る。それは自分の中で、どうにもつじつまが合わない。

私はまだ怒ってる!
まだあの時のことを許してなんていない!
だって私がどれだけ傷ついたかちゃんとわかってる?
ちょっと優しくなったからって私の痛みを全部チャラにできるなんて思わないでよ!

って想いが噴出してくるんですよね。

だから、受け取りを拒否する。これは、まだ折り合いのついていない自分にとって、とても真っ当な守り方なんです。

考えてみると、怒りって、ずっとあなたを守ってきてくれたものなんですよね。

尊重されなかった。
認めてもらえなかった。
受け入れてもらえなかった。

そう感じたとき、人はもう二度と、あんな思いをしたくないと思います。そのために、怒りで相手をはじく。そうやって、これ以上傷つかないように、自分を守ってきた。

その怒りは、正しかったんです。

心の奥には、あのとき「ちゃんと見てほしかった」「認めてほしかった」と感じていた、小さな自分がいます。心理学では、インナーチャイルド、なんて呼んだりもします。その子が傷つかないように、怒りが前に立って、盾になってくれていたんですね。

だから、怒りを責める必要はないんです。ここまで自分を守り抜いてきた、大事な味方なんですから。

でも、盾を構えたままだと、こんなことも起きます。怒りで相手をはじいている間は、その相手から向けられる愛も、一緒にはじいてしまうんです。本当は、いちばんその人に認めてほしかったのに。

飛んでくる攻撃も届かないけれど、向けてくれた優しさも届かない。両方まとめて、はじいてしまう。

いちばん遠くにある愛から、受け取ってみる

じゃあ、どうするか。

いきなりお母さんの愛を、元夫の愛を受け取ろうとすると、どうしても盾が上がってしまいます。それはもう、体が反射でやってしまうくらい自然なこと。

だから私は、まずいちばん遠くにある愛から、受け取ってみることをおすすめしています。

たとえば、コンビニやスーパーで買った、お弁当。

何気なく、わりと安い値段で買って、普段どおり食べていますよね。でも、あのお米。あの一粒が今あなたの目の前にあって、口に運べる状態になっているまでに、どれだけの人の手がかかっているんでしょう。

種をまいた人がいて、水を張った人がいて、暑い中で世話をした人がいる。刈り取って、運んで、袋に詰めて、お店に並べて、レジを打った人がいる。

添えられている、お漬物ひとつだって同じです。誰かが野菜を育てて、漬けて、包装して、ここまで運んできてくれた。

そう考えると、当たり前に食べているこのお弁当が、実はたくさんの人の手を通ってきた、ということに気づきます。それって、いつもそこに、誰かの働きかけがあるということなんですよね。

この愛には、あなたの傷とか怒りとか、ないですよね。

誰かに頭を下げなきゃいけないわけでもない。受け取ったからといって、あなたの怒りを裏切ることにもならない。だから、盾を構えたままでも、すっと受け取れるんです。

まずは、この「受け取るって、悪くないな」という感覚を、体で思い出してみる。それだけでいいんです。

慣れてきたら、少しずつ距離を近づけていきます。よく行くお店の、名前も知らない店員さんの気づかい。友人が、何気なくかけてくれた言葉。

遠さは、自分で調整できるつまみみたいなものだと思ってください。無理のないところから、一段ずつ。

いちばん近くの人にも、届いていく

不思議なもので、遠くの愛を受け取ることに慣れていくと、だんだん近くのものも受け取れるようになっていきます。

そして、遠くの愛で「受け取るって、こんなに満たされるんだ」と思い出していくと、ふと浮かんでくる顔があります。

本当は、いちばん愛されていると感じたかった相手。いちばん近くにいた、あの人です。

お母さんかもしれない。元夫や、別れた彼かもしれない。

その人から受け取れるようになるには、どこかのタイミングで、握りしめてきた怒りを、そっと下ろしてみる必要があるのかもしれません。

でも、勘違いしてほしくないんです。これは、「相手が悪くなかったと認めなさい」という話ではありません。あなたが感じてきた痛みは、本物です。それはそれとして、ちゃんと癒すといい。

怒りを下ろすのは、相手のためじゃないんです。

あなたが、いちばん受け取りたかったものを、もう一度受け取れるようになるため。ただ、それだけのため。

そしてもうひとつ。怒りを下ろすことと、その人と実際に仲良くすることは、まったくの別ものです。

下ろしたうえで、距離を置き続けたっていい。もう会わない、という選択をしたっていい。心の中の盾を下ろすことと、現実でどうつき合うかは、切り離して考えて大丈夫なんです。

だからこそ、安心して、自分の心のほうだけを見つめられます。

受け取れる自分を、自分に許してあげる

今日、怒りを下ろせなくても、まったく問題ありません。

無理に手放そうとしなくていい。握りしめたままでいい。「そろそろ、下ろしてみようかな」と考えてみる。今日は、それだけで十分なんです。

ずっと自分を守ってきた怒りに、「今までありがとう」と声をかけてあげる。そして、いちばん受け取りたかったものを、少しずつ受け取っていい、と自分に許してあげる。

受け取ることは、負けじゃありません。過去をなかったことにすることでも、ありません。

それは、あなたがこれまで我慢してきたぶんの幸せを、もう先延ばしにしない、ということ。ワタシを幸せにするために、ワタシが選び直す、ということなんです。

いちばん遠くのお米の一粒から。今日から、少しずつで大丈夫です。

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怒りを下ろすというのは、頭でわかっても、一人で進めるのはなかなか難しいものです。

「下ろしたいのに、下ろせない」
「受け取ろうとすると、涙が出てくる」
「そもそも、自分が何に怒っているのかわからない」

そんなときは、一緒に、あなたの心の奥をたどっていきます。守ってきた怒りの下に、どんな気持ちがいるのか。その子は、本当は何を受け取りたかったのか。

安心できる場所で、あなたのペースで大丈夫です。よかったら、カウンセリングでお話を聞かせてください。

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