感じる身体になる

「もっと頑張らなきゃ」
「弱音なんて吐いてちゃダメ」
「人に迷惑をかけてはいけない」

——そんなふうに、常に“自分を律する声”が頭の中に響いていること、ありませんか？

こんな風に常に自分にダメ出しをしていたり、
「こうしなきゃ」「もっと頑張れ」「失敗してはいけない」など、
自分を責めたりコントロールしようとする内なる声を、「エゴの声」と心理学の世界では呼びます。

エゴの声は、「完璧を求める厳しい上司」や「周りの目を気にする監視役」のような存在。
優しさではなく、“恐れ”や“不安”からあなたを動かそうとします。

この「エゴの声」は、私たちを守ろうとする働きでもあります。
でもそれが強くなりすぎると、私たちは感じることを手放してしまいます。

エゴの声はどこから生まれるの？

多くの場合、エゴの声は子どもの頃の経験や、育ってきた環境の中で身についた「生き残るための知恵」から生まれます。

たとえば

「人に迷惑をかけてはいけない」
→ 小さい頃、親の顔色を見て気を遣っていた

「ちゃんとしていないと愛されない」
→ 失敗すると怒られたり、無視された記憶がある

「頑張らないと価値がない」
→ 頑張ったときだけ褒められた

こうした経験を通して、私たちは“本当の自分を感じること”より、“求められる自分を演じること”を優先するようになってしまうのです。

思考（エゴの声）が優位になると、感情や身体感覚は“感じられなくなる”

私たちが「感じられない」「自分の気持ちがわからない」となるとき、
多くの場合、“思考”が感情や身体の声を上書きしている状態が起きています。

思考とは、考える力そのもの。
「こうした方がいい」「あのときはこうするべきだった」など、分析したり、判断したりする働きです。

そしてその“思考”の中でも、エゴの声はとても影響力が強い存在です。
エゴの声は、「こうしなければ」「〜すべき」というルールや恐れから生まれた思考のかたまり。
この声が強くなると、本来感じるはずの感情や身体のサインが、どんどん見えなくなっていくのです。

本当は「感じている」のに、思考がかき消してしまう

たとえば、こんな心のやり取りを思い出してみてください。

◆ 本当は泣きたい

でもすぐに…

「泣いちゃダメでしょ。大人なんだから、もっとしっかりしないと」

と、泣きたいという感情の声が、“ダメなこと”として思考に打ち消される。

◆ 本当は助けを求めたい

でもすぐに…

「そんなこと言っても迷惑だよ。情けないって思われるだけ」

と、助けを求める感情が、“弱さ”と判断されて閉じ込められる。

◆ 本当は休みたい

でもすぐに…

「でも他の人も頑張ってるし、自分だけ休むなんて甘えだ」

と、疲労のサインが、“甘え”と変換されて否定される。

このように、エゴの声が強いと、
感じたはずの感情が、思考によって“なかったこと”にされてしまうのです。

でも

実は、感じていないのではなく、「感じることを許されていない」状態だったりするのです。
そしてその瞬間も、身体はちゃんと教えてくれているんです。

身体は、言葉よりも早くあなたの本音を伝えてくれている

感情は、頭で考えるよりも前に、身体に先に現れます。
たとえば…

• 胸が苦しい
• 喉が詰まる
• 背中がぞくっとする
• みぞおちがキュッと縮こまる
• 肩が張って息が浅くなる

そんな小さな感覚を、思考は「気のせい」「そんなことより…」と追い払ってしまう。

でも本当は、その小さな違和感こそが、自分の感情の入り口なんです。

感情は、“感じてはいけない”ものではなく、“感じることでしか癒えない”もの

感じたことを否定せずに、「私は今、こう感じているんだな」と見つめてあげること。
それが、感情と身体の感覚をつなぎ直すための一歩になります。

思考が感情を押し込めようとしたときこそ、
「じゃあ今、身体はどんなふうに反応してる？」と、そっと自分の身体の声に耳を傾けてみてください。

泣きたかった自分
助けを求めたかった自分
休みたかった自分

それは、あなたの弱さではなく、あなたの“本音”です。
本音に触れるとき、あなたのこころに少しずつ、ほんの少しずつ「安心」が戻ってきますよ。

あなたに届けたいメッセージ