優しい人は損をする?優しさを分かち合う心理学

私たちの多くは、誰かに優しさを注ぎながらも、それが返ってこないと感じたときに心が疲れてしまう経験を持っています。

あなたも、そんな経験はありませんか?

このブログでは、優しさを「試し合い」ではなく「分かち合い」として育むための心理学的な視点をご紹介します。

目次

こんなにしているのに、どうして…?

※以下は掲載許可をいただいている内容です。

彼が喜んでくれるって思っていろいろしているのに、どうして彼は私を大事にしてくれないんでしょう?

Aさん(女性)は、3年間付き合った恋人Bさんとの関係に悩んでいました。Aさんは、恋人に対していつも献身的にサポートをしてきました。家事を手伝い、仕事で疲れているBさんを励まし、誕生日や記念日には精一杯のおもてなしをしていました。しかし、Bさんからは感謝の言葉や特別な行動があまり返ってこず、次第にAさんは「こんなにしているのに、どうして私は大事にされないのだろう」と感じるようになりました。

自分の感情に目を向けてみよう

Aさんはセッションで次のようにお話ししてくださいました。
「私がしていることは全部、彼が喜んでくれると思ったからなんです。でも、最近は彼の反応が冷たい気がして、私がこんなに頑張る意味がわからなくなってきました。」

Aさんにこう質問しました。
「Aさんが恋人Bさんに対して優しさを注ぐとき、自分の中にどんな感情がありますか?」

Aさんは少し考えた後に答えました。
「愛情ももちろんあります。でも…どこかで、『彼が私をもっと愛してくれるはず』という期待もあるんです。」

期待と失望

優しさが無意識のうちに「自分の価値を確認する行動」になってしまうと、相手の反応が期待に届かないときに失望感が生じやすくなります。補償行為と言ったりもします。

私はあなたのためを思って○○するから、その代わり私を愛してね、優しくしてね、という期待が入る。
その奥には、○○しなければ、何もしない私なんて愛されないし優しくもされない、という自己否定感があるんですね。

でも本当は、恋人BさんがAさんを選んでいる理由は、Aさんが○○してくれる人、だからではないはずなのです。

Aさんとは、次のような問いを一緒に考えました。

「恋人Bさんがどう反応しても、Aさんが自分の価値を感じられる方法はありますか?」
「優しさを注ぐこと自体を楽しめる小さな行動を考えてみませんか?」

Aさんは、恋人Bさんの反応に一喜一憂するのではなく、自分が無理なくできる優しさを心から楽しむことに意識を向ける練習を始めました。

優しさを取り戻す

数週間後、Aさんは自分のしてあげたいこと、できること、できないこと、やりたくないこと、を自分の中で明確にし、恋人Bさんに伝える行動をし始めました。すると徐々にですが、無理に期待を抱かずにBさんとの時間を楽しむことが増えたようでした。

また、自分自身を労わる時間を作ることで、精神的な余裕も生まれました。Aさんの内面的なストレスはだいぶ軽減され、より健全な形で、恋人Bさんに対する優しさを表現できるようになったようでした。

自分に優しさが向いていない時、自分では自分を否定し、でも相手には自分を認めてほしい、という、優しさが取引材料のようになってしまうことがあります。本来優しさを持っていること自体はその人の宝のはずなのに、それが自分には使われていないと、目の前に現れる現実がとても歪んで見えてしまうことになります。

外に優しさを使うことも素敵なことですが、自分自身にもその優しさを向けてあげられると、自分の世界に優しさを取り戻すことができます。

優しさを注ぐ心理的背景

優しさを注ぐとき、人の心にはさまざまな動機が働きます。その中には、相手の喜ぶ顔を見たい純粋な気持ちもあれば、「認められたい」「好かれたい」という承認欲求や自己価値感の影響も含まれることがあります。

また、優しさを通じて無意識に「自分は大切な存在だ」と感じたくなる場合もあります。これは人間にとって自然な心理ですが、見返りを求めすぎると、優しさが「試し」の手段に変わってしまう危険性があります。

たとえば、「こんなに頑張っているのにどうして気づいてくれないの?」といった感情は、優しさを見返りと結びつけたときに生じやすいものです。この状態では、優しさがストレスの原因になりかねません。

優しさを「試し合い」ではなく「分かち合い」に変える

優しさを「試し合い」ではなく「分かち合い」に変えるためには、次のポイントを意識することが大切です。

相手の反応を期待しすぎない

優しさは、自分ができる範囲で無理なく与えるものであり、相手の反応はコントロールできないものです。期待値が上がっている、と感じたら、その自分をまずは認めてみましょう。それでも相手のために何かしたいと思えば、自分の優しさが相手に向いている時です。その心の在り方を純粋に楽しみましょう。

相手が求める優しさを考える

時には、自分が良かれと思った行動が、相手にとって負担になることもあります。相手が本当に求めているものに目を向けることで、健全な優しさが生まれます。

相手の求めていることを知るために、直接声をかけて聴いてみるのも良いかもしれませんね。

自分の気持ちを正直に見つめる

「自分はなぜ優しさを注いでいるのか?」と自問することで、見返りを求める気持ちや、無理をしていないかを確認できます。

心身ともに余裕が無くなると、人は誰でも優しさを他者に向けることは難しくなります。優しくできない自分に出逢ったとしても、そんな自分を受け止め許してあげることが、また自分を優しい人に戻してくれます。

自分を大切にするためのヒント

優しさが返ってこないと感じたとき、自分を守るためのセルフケアが必要です。

境界線を引く

「ノー」と言う勇気を持つことや、自分が疲れすぎる前に距離を取ることが大切です。健康的な境界線を持つことで、優しさがストレスに変わるのを防げます。

無理せずに表現する

無理に優しさを注ぐのではなく、シンプルな言葉や行動で気持ちを伝えるだけでも十分です。

自分を労わる時間を持つ

自分のエネルギーを回復させるために、リラックスする時間を意識的に作りましょう。

最後に

優しさはエネルギーです。それは相手に与えれば与えるほど減るものではなく、適切に分かち合うことでさらに豊かになります。

もし、あなたが「優しさが返ってこない」と感じたら、無理せず一度立ち止まってみてください。そして、その優しさをどこに向けるべきか、自分の心に問いかけてみましょう。あなたの優しさが、無理のない形で分かち合える関係を育むことを願っています。

今日の実践アイディア:優しさのセルフチェックリスト

1. 今、誰に優しさを注いでいますか?
2. その優しさは無理をしていませんか?
3. 相手の反応に期待しすぎていませんか?
4. 自分を労わる時間を確保していますか?

これらを意識しながら、日々の人間関係を少しずつ見直していきましょう。

優しいあなたの、豊かな毎日を応援しています。

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